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「ふうん、これがラウ・ル・クルーゼが託したという鍵か……」
アズラエルは自室でフレイがもたらした「鍵」の内容をPCで確認しようとしていた。ラウ・ル・ク
ルーゼ。どうにも信用のできない男だが、あの男は自分が必要としている情報をいつも提供して くれる。
「! フリーダム、ジャスティス……!」
あの2機のスペックが画面中を踊る。そして、ついにソレを見つけた。
「Nジャマーキャンセラー……!」
禁じられた火の封印を解く鍵を見つけた! ついに始まるのだ! 宇宙のバケモノを滅する戦
いが!
「ようやくだよ……セレナ! 君の敵を討つことができる……! あは……ははっはははっはは
はははははははは!!!」
アズラエルは狂った笑いを発しながら涙した。もう戻ってくることのない、初めて自分に愛情と
いう名の感情を与えてくれた女との出会い。そして永久の別れの記憶を思い出して。
(6) 禁じられた火
「何ィ!? 地球軍がボアズに?」
メンデルでの一戦後、プラントに帰国して2ヶ月が経ったある日、ブリーフィングルームでイザー
クはジュール隊隊員であり赤服を纏うエースパイロット、シホ・ハーネンフスから信じがたいニュ ースを聞いた。
「ええ。今、現在アークエンジェル級、アガメムノン級数隻、そして……例の新型MS4機がボア
ズに侵攻中よ」
「あいつら……!」
イザークの脳裏には宿敵レイダーの姿が思い浮かんだ。あの4機は危険だ。ボアズ防衛隊だ
けでは抑えられないかもしれない。しかし……。
「オレたちはそれでも待機だというのか……!」
「落ち着いて、イザーク。ボアズの強固さはあなたも知っているハズよ」
「あの4機は危険なんだ。今まで遭遇した敵の中でも最悪のな」
「一騎当千の連中ってワケね。でも、ボアズが落とされるなんて考えられる?」
シホの問いにイザークは少し間をおいて答えた。
「オレとてボアズの戦力を侮っているワケではない。だが、連中もボアズの頑強さは知っている
ハズだ。なのになぜ……?」
「それは新型MSの」
「いや、いくらあの4機とてそれだけでボアズを落とせると連合が考えるとは思えない。何か勝算
があるんだ」
「勝算?」
「ブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルは勝算無しで勝負に臨む男じゃない。嫌な予感が
する……」
もしその予感が当たってボアズが陥落し、プラントにその牙がやってきたら? 血のバレンタイ
ンを思い出し、どうにも落ち着きのないイザークの右手を、シホがそっと握った。
「シホ?」
シホは何も言わず、イザークの右手を自分の胸に押し当てた。
「!?」
突然の事に焦るイザーク。シホは穏やかに微笑み、
「分かる? 私の心臓……こんなにドキドキしている」
「……シホ」
「私だって怖いの。またあの惨劇が起こるんじゃないかって……。でも、私は…」
シホとて何も感じていないわけではない。膠着した戦況、地球軍の不可解な行動。不安でたま
らないのだ。それでも自分を奮い立たせ、イザークを励まそうとしている。そんな彼女が愛しくな り、イザークはシホを抱き寄せた。
「イザーク?」
「……ふ、オレらしくなかったな。何今更震えてんだか」
「……」
「もうすぐ、新デュエルが完成する。絶対にプラントをユニウス・セブンの二の舞にはさせん。プラ
ントは絶対にオレが守る! そしてシホ、お前もな」
「イザーク……」
しばし、イザークとシホは見詰め合った。二人が抱擁を解いたのは、別の隊員がルームに入っ
て来てからだった。
「オイオイ……ザコばっかかよ」
クロトはつまらなさそうに呟きながらも口砲、ツォーンでゲイツを撃破する。
「文句言ったら、薬もらえないよ?」
シャニはフレスベルグの変幻自在の射線で次々とMSを狩っていく。
「わ〜ってるよ! ホラ、後ろ!!」
クロトはシャニの背後に接近してきたシグーに2連砲を喰らわして、撃墜した。
「ありがと」
「どーいたしまして!」
2人は散開して、さらに敵を求めた。
「ザコばっかじゃ、面白みがねェな」
オルガもシュラークでザフトのMSを片っ端から狩っていた。
「言えてる!」
セレナもゲイボルグでMSや戦艦を消滅させた。そのまま連射して、ボアズへの「道」を作って
いく。あともう少しだ。
「しっかし、オレたちの機体もかなり改良されたよね〜」
クロトが上機嫌な口調で言った。
「うん」
シャニも珍しく、上機嫌な様子が伺える。
「そうよね〜。核エンジンのおかげよね〜」
「ああ、まったくだぜ」
オルガとセレナも機嫌がいい。アズラエルがNジャマーキャンセラーのデータを入手してから2
ヶ月。月基地で4機のGの改良が行われた。
核エンジンを搭載し、無尽蔵のエネルギーを獲得した4機のGはボアズ防衛隊にその新たな牙
を容赦なく突き立てていた。
「これでフィニッシュ!!」
オルガは全砲門発射で目前の戦艦、MS部隊を一気に一掃した。「道」は開かれた!
「あとはお偉いさん方に任せようや」
ちょうどその時、アズラエルからの通信が舞い込んできた。
「ご苦労様です。あとはピースメーカー隊に任せてください」
「りょーかい!」
オルガたち4人は散開し、後方から来た「ミサイル」を抱えたメビウス数機の横につく。
「なんだ、アレは?」
ゲイツの一機がそのメビウス群に気づき、近づこうとするが、
「ダメだよッ!」
クロトがレイダーのツォーンでゲイツを落とした。
「君たちはそこで「花火」でも見物してな!」
そうこうしている内にメビウスたちはミサイルの射程距離範囲に突入した。
「くたばれェ! 宇宙の化け物ォ!!」
「蒼き清浄なる世界のためにッ!!!」
次々とボアズに打ち込まれるミサイル。それがボアズ内部に着弾した瞬間。
「こ……これはッ!!」
「どうした!?」
ボアズ司令室に驚愕が走る。
「そんな! この熱源は! か……!」
言い終わる前に彼らに体は「消滅」した。
「おお!!」
オルガはその光を見て、驚嘆の声を上げた。
「すっごいね〜!」
クロトも子供みたいにはしゃいでいる。
「まぶしィ〜!」
シャニはただ単にまぶしがっているようだ。
「……綺麗ねェ」
セレナはうっとりとした声を上げている。
「これは……!」
ナタルは目の前の光景に絶句していた。まさか、これほどの威力とは……。
フレイは完全に怯えきっているようだ。無理も無い、一瞬で何万もの命が消えたのだから。
ナタルはふとアズラエルの方を見た。この光景を待ち望んでいた男だ。さぞかし、ご満悦だろう
と思ったのだが、
「ふん、こんなものか」
そこにはいつもの嫌味な笑みはなく、どことなく冷めた目つきをしたアズラエルがいた。まるで
楽しみにしていた映画がつまらないものだったような顔つきだ。出撃前はあんなに上機嫌だった のに……?
「拍子抜けだね。いくら遺伝子をいじったものとて、強大な火の力の前には僕らと同じく無力か」
「アズラエル理事……?」
「ん? ああ、さすがは核の力だね。この分ならプラントも落とせるな。向こうも核を撃ってきたら
困るけどさ」
「え……ええ」
それはナタルも懸念していたことだ。Nジャマーキャンセラーは元々、プラントの技術だ。このボ
アズ陥落が知れたら、向こうはより強力な核使用兵器、フリーダムやジャスティス以上の兵器を 作るかもしれない。
「そのためにもオルガたちの機体を核搭載MSに改造したんだけど、ちょっと不安だね」
アズラエルはしばし思案し、
「彼らにも協力を求めますか」
冷酷な笑みを浮かべ、呟いた。
「ふざけるな! キサマのおかげでどれだけの兵士がアラスカで死んだと思っている!!」
「それは僕も悪かったと思っていますよ、ガルシア司令?」
アズラエルが今、通信で話している相手はユーラシア連邦の将校、元アルテミス要塞の司令、
ガルシアだ。
「しかし、今はプラントという脅威を取り除くのが先でしょう? それが終わったら、僕はいつでも
責任を取りますよ」
「キサマ、ぬけぬけと……!」
「あ、そうそう。それでお宅の特務部隊「X」の力を貸してもらえるとありがたいんですがねえ」
ガルシアの怒りもどこ吹く風と言わんばかりにアズラエルは淡々と言葉を続けた。
「! キサマ、なぜ、それを」
「僕の情報網を甘く見てもらっては困りますね。しかしまあ、部隊と言っても、まだ一人しかいない
ようですね? スーパーコーディネイターの失敗作の小僧。名前は確か、カナード……」
ガルシアはそれを聞いて、顔をしかめた。
「ヤツは我々の貴重な兵力なのだ。処分する事は……」
「僕は別に彼を処分する気はありませんよ。ただ、貴重な戦力として使うだけです。ご安心を。そ
れに彼の経歴を見ると、クライン派に彼が求めている人物がいると思うのですが?」
「何だと!?」
「彼が捜し求めている人物、キラ・ヤマト。私の情報によれば、フリーダムのパイロットだそうで
す。彼に伝えてもらえませんか? 「本物」になるチャンスだとね」
ボアズが核に蹂躙され、連合艦隊が去った後、近くの宙域には一隻の宇宙船が漂っていた。
「劾の言っていたことは本当だったのか……」
とあるジャンク屋の母船、リ・ホーム。ジャンク屋の少年、ロウ・ギュールはボアズを襲った惨劇
を目の前にして怒りで拳を震わしていた。
「どうしよ〜! このままじゃ、プラントが!」
気弱そうな眼と対照的に派手なファッションが印象的な少女、山吹樹里はその光景におびえき
った表情をしていた。
「地球軍はこのままプラントへ侵攻するでしょうね……」
長髪で穏やかな顔立ちの青年、リーアム・ガーフィールドは顔をしかめて呟いた。
「どうするの、ロウ? 例の連中にこの事知らせる?」
眼鏡に隠された挑発的な目つきと美貌が印象的な女性、通称プロフェッサーはロウに意見を
求めた。
「劾にも知らせた方がいいでしょうか? 彼らに協力すべきだと……」
そう意見したのは、6歳の少女でありながら傭兵部隊サーペントテールの一員である風花・ア
ジャーだ。
「僕も風花ちゃんには賛成です。地球軍の戦力はプラントと比べて充実しています。今はそれを
止められる戦力が一つでも多く必要です。力及ばずながらも僕もお手伝いさせていただきま す!」
風花に同意を示したのはマルキオ導師の使いとして、ドレッドノートを受け取った金髪を携えた
少年、プレア・レヴェリーだ。
「そうだな。劾たちの力は確かに借りたい。風花、劾たちにここの場所を知らせてくれないか?」
「了解!」
風花は作業に移るためにブリッジを出て行った。
「僕も行って来ます」
プレアも風花の後を追った。
「さてっと、連中には補給を兼ねて知らせに行った方が……ん!?」
ロウが近辺レーダーを確認した。そこには一個の光点がリ・ホームへと近づいていたのだ。
「この反応は……8!」
「マカセロ!」
ロウは相棒であるスーパーコンピューター「8」に反応の正体がなんなのか、確認させた。する
と、
「リジェネレイト……! アイツか!!」
「フフフ……いつかのジャンク屋か。以前は逃がしたが、今度は逃がさん!!」
ZGMF−X11A「リジェネレイト」のパイロット、アッシュ・グレイはコクピットの中で残忍な笑みを
浮かべた。
「さあ、始めるとしようか? 殺戮の宴をッ!!」
リジェネレイトは巡航形態に変形して、リ・ホームへと突っ込んでいった。
「のわ!」
「う!」
「きゃあ!」
「……ち!」
ブリッジの4人は突然の衝撃に顔を歪めた。
「いつかのアイツだ! やはり、リ・ホームの攻撃では追いつかんな!!」
突如、空間から金髪を携えた男が出てきた。ファースト・コーディネイター、ジョージ・グレン。今
より数十年前、年端も行かない少年に射殺された彼だが脳は無事であった。G・G友の会によっ て彼の脳はG・Gユニット内部に保管されていた。それをプロフェッサーが改造し、ホログラフとし て活動できるようになったのだ。
「ロウ、レッドフレームでやるしかない! パワーローダーは以前の戦いで中破しているから使え
んが……いいか?」
以前、ロウはパワーローダー装備レッドフレームでアッシュの駆るリジェネレイトと死闘を繰り
広げたが、リジェネレイトの特殊能力に翻弄されて、パワーローダーごと左腕を高出力砲に吹き 飛ばされてしまったのだ。咄嗟にプレアがドレッドノートでロウを援護して、彼らは逃げ切れたの だが、今度は逃げ切れそうも無い。
「ああ、いいさ。何とかやってみる」
ロウはそのまま格納庫へと急ぐ。
「ロウさん! どうしたんですか!?」
プレアは異変を感じ、ロウの元へと駆け寄ってきた。
「リジェネレイトがまた来やがった。アイツもしつこいヤローだ」
「ロウさん、僕も!」
プレアが援護を申し出たが、
「いや、お前はここに残っていてくれ。でも、いざって時には……頼むぜ?」
「……はい」
ロウはレッドフレームに乗り込み、出撃した。
「行くぜ!」
ロウはリ・ホームの周りを蜂の如く、動き回るリジェネレイトにMS用日本刀、ガーベラ・ストレー
トで切りかかった。
「その太刀筋はもう見切っている!!」
アッシュは巧みにリジェネレイトを操作し、その斬撃をかわした。
「くそ! 速すぎるんだよッ!!」
ロウはビームアイフルで狙おうとするが、リジェネレイトの超スピードに翻弄される。
「ははは! 遅い、遅すぎるぞ!!」
MS形態となり、ビームサーベルで切りかかってくるリジェネレイト。
「うわ!」
咄嗟に刀で防ぐロウ。
「くくく、おとなしくオレのコレクションとして加わるがいい!!」
「へ……誰がテメエみてェな殺人狂の言うことなんか聞くかよ!!」
ロウは力任せにリジェネレイトを突き飛ばす。
「ほう? 少しは楽しませてくれるか。そういえば以前、もう一機おもしろいMSがいたな。アイツ
はどうした?」
「オレ一人でテメエなんか十分ってこったい!!」
「それはまたおもしろい冗談だ。いいだろう、どこまでもつか試してやるッ!」
巡航形態となりレッドフレームに向かって突っ込んでくる!
「くあ!?」
刀でそれを受け止めるがいかんせん、パワーが違いすぎる。跳ね飛ばされるレッドフレーム。
「はっはァ! 終わりだ、ジャンク屋の小僧!!」
リジェネレイトの中央部の高出力砲が放たれようとしている!
「くそ、ここまでか…!?」
「キサマの悪運とやら……尽きたようだな?」
「いえ! まだ尽きてはいませよ!」
リジェネレイトにビームが打ち込まれた。
「何!?」
アッシュはその射線をなんとかかわした。彼の目先にあったのは
「あのMS……」
「ここからは僕が、いえ僕達が相手です!!」
コックピット内部のプレアとその後ろにいる風花はリジェネレイトを睨みつけた。
「ほう? キサマだけでなにが」
「おおっと! 余所見はいけねェぜ!?」
「何ィ!?」
リジェネレイトを無数の散弾が叩く。
「ぬう!?」
たじろぐアッシュの視線の先には、
「バスターだと!? それに……!」
バスターだけではない。アークエンジェル、クサナギ、ラクス・クラインが搭乗しているエターナ
ル。そしてミーティアを装備したジャスティスとストライクまでもがいる。
「おのれ! まあいい。いずれキサマらもオレのコレクションに加えてやる! 楽しみにしてい
ろ!」
リジェネレイトは巡航形態となり、その場を離脱した。
「あの声……アッシュ・グレイか。厄介だな」
ディアッカはリジェネレイトの去った方向を見て呟いた。
「ああ、ヤツはザフトでも特に危険視されていたヤツだからな」
アスランも同意を示した。
「ふい〜助かったぜ、ディアッカ」
ロウが安堵の声を上げた。
「ヤローに2度も狙われて、よく生きていたな。ロウ?」
こうしてクライン派とジャンク屋一行は合流できた。後に連絡を受けたサーペントテールの面々
も合流したのであった。 |