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「こん・・・ああああああああああああああああああああああああああ!!!」
 連合軍旗艦のとある部屋で、オルガは全身を駆け巡る痛みに耐えていた。周りではクロトとシ
ャニも同様の痛みに耐えていた。アズラエルが言う「お仕置き」だ。寒くなったかと思えば、熱くな
る。全身に激痛が走る。
 彼ら「ブーステッドマン」は「r−グリヘプタン」という薬物が無ければ、超人的な能力を発揮でき
ない。そして定期的に投与されなければ「何も分からず」に死んでいくのだという。
 大切な者をザフトに奪われて、ブルーコスモスの「ブーステッドマン」計画に志願した3人。苦し
みながらも彼らは、共通の思いを抱いている。
「失った痛みに比べれば!」
 そして、3人を閉じ込めていた扉が開かれた。3人の猛獣は再び獲物を求め、3機のMSへと
駆け込んだ。強力な薬物を投与され……。


(2) オーブ崩壊


 モルゲンレーテに敵襲警報が鳴り響く。連合の新型MSが再度、襲来したのだ。ディアッカ・エ
ルスマンは再びパイロットスーツを装着した。
「このままだと連合、プラントで殺し続けなくちゃならない」
 キラの言葉が脳裏によみがえる。それが良くないことなのは分かる。ならば、自分の敵は?
「キラ」
 隣を見ると、アスランが飛び立つフリーダムを見送っている。そのアスランに、ディアッカはさり
げなく近づく。
「ディアッカ!」
 アスランは、パイロットスーツ姿のディアッカを見て驚いている。ディアッカはあえて皮肉げに微
笑を浮かべた。
「まいったね〜。お前、アレ奪還しに来たんだろ?」
「……そうだ」
「だったら、オレはお前を倒さなきゃならねえ」
 ディアッカは、腰のホルスターから銃を取り出しアスランに向ける。
「!」
「アイツは今のオーブに必要な力の一つだ。さあ、どうする? お前はオレたちを殺したいの
か? それとも、あいつらを死なせたくないのか? どっちなんだ?」「俺は……あいつらを死な
せたくない!」
 アスランは必死の表情で訴えた。それを見て、ディアッカは銃を収めた。そして微笑みを浮か
べ、アスランの肩を叩いた。
「珍しく、ってかさ、初めて意見が合うじゃんよ?」
「ディアッカ……」
「さっさと出撃準備しろよ。あの3機はオレとキラ、お前がいなきゃ抑えられねェんだからよ」



「くそっ!!」
 キラはやはり苦戦を強いられていた。3機の波状攻撃は強力だ。カラミティの乱射撃、レイダー
のミョルニル、フォビドゥンのフレスベルグが襲い掛かる。シールドで防御し続けるフリーダム。
だが、このままでは!
 その時、
「はあ!!」
 ジャスティスのバッセルがフォビドゥンを、バスターのライフルとガンランチャーがカラミティとレ
イダーを狙う。3機はそれぞれ散開してかわした。
「え?」
「キラ!!」
 ジャスティスからアスランの通信が届く。
「ア、アスラン! どうして!?」
「アイツにも分かっているのさ、守るために戦わなきゃならねえって事がさ!」
 岸からカラミティとレイダーを狙撃したディアッカからの通信が入る。
「お、あいつか!」
 ディアッカのバスターを見つけたオルガは、歓喜の声を上げる。以前の戦いで
手痛い目に合わされた相手。今、殺したい奴ナンバー1だ。
「あいつは俺が殺る! お前ら、手を出すんじゃないぞ!」
「ご執心だねえ。OK、あいつはオルガがやれよ。僕とシャニは白いのと赤いのをもらうよ!」
 言うが早いかクロトはMA形態のレイダーを駆って、シャニのフォビドゥンと共にキラのフリーダ
ム、アスランのジャスティスに襲い掛かった。
「任せろ! おらおら、いくぜ!」
 カラミティは水上をホバー移動し、岸のバスターに向かって来た。
「来たか! 望むところだ!」
 バスターはガンランチャーとライフルを連射する。対して、カラミティはシュラークを連射してき
た。銃砲撃戦ガンダム同士の壮絶な撃ち合いが開始された。



「そりゃあああ! 抹殺ッ!!」
 レイダーのミョルニルが、フリーダムに向けて放たれる。
「そんなものッ!!」
 フリーダムはクスィフィアスをミョルニルに向けて発射した。激突する両者。威力は互角で、ミョ
ルニルはその勢いを失った。
「何!?」
「うおおおおおおおおおお!!」
 フリーダムはミョルニル回収に手間取っているレイダーに向かって、高速で突っ込んだ。そし
て、
「ぐお!?」
 その勢いのままフリーダムはレイダーを蹴飛ばした。海中に沈むレイダー。
「クロト、何やってんの? しょうがないなあ、そいつは俺が片付けてやるよ!」
 フォビドゥンがフリーダムの方へ向かおうとした時、
「どこへ行く! お前の相手は俺だ!」
 ジャスティスが肩からバッセルを放ち、フォビドゥンを襲う。
「はん、その程度で!」
 大鎌ニーズヘグを巧みに使いバッセル2機を弾くフォビドゥン。だが、
「え!?」
 続いて来たジャスティスの背部大型リフター「ファトゥムーOO」には対応できずに直撃させられ
る。
「ぐあっ!」
 その勢いに態勢を崩されたフォビドゥン。更にジャスティス本体の蹴りを喰らい、完璧にコントロ
ールを失った。そこへ遠方からフリーダムのクスィフィアスが打ち込まれた。それはゲシュマイデ
ィッヒ・パンツァーで防ぐが、二対一ではさすがに分が悪い。
「ちいっ、何やってんだよ、クロト! さっさと上がってこいよ!」
「煩いよ、シャニ! 言われなくても分かってる!」
 激昂と共に、海に落とされたレイダーが復活。
「こんのォ、白い奴、ニ度もオレを蹴り飛ばしやがってェ! 撃滅ッ!!」
 レイダーの口砲ツォーンがフリーダムに襲い掛かるが、間に割り込んだジャスティスのシールド
によって防がれた。
「まったく、イザーク並の執念だな」
 アスランはかつての同僚の顔を思い出した。
「お前らァ〜!!」
 フォビドゥンも、フレスベルグを連射しながら向かってくる。
「こいつら、まだ!」
「アスラン、気を付けて!」
「分かってる!」
 アスランは微かな疲労感と苛立ちを感じながら、フォビドゥンに立ち向かう。キラもまた、フリー
ダムをレイダーへと向かわせた。



「こんのォ〜!!」
「オラオラオラァ〜!!」
 ディアッカ、オルガの両者は海岸で砲撃戦を繰り広げていた。しかし、カラミティの火力はバス
ターの約5倍もあるのだ。防御面でも、カラミティのトランスフェイズ装甲はバスターのPS装甲を
上回っている。機体の性能差で、ディアッカは窮地に立たされつつあった。
「このままじゃあ、やられちまう。どうすれば……!」
「おーい! 大丈夫か、坊主!」
 その時、エールパック装備のストライクが、バスターの上空へ飛来した。そのままカラミティを空
中からライフルで狙撃する。
「ちィ! またアイツかよ!?」
 オルガはカラミティを回避運動させる。バスターの傍らに降り立つストライク。パイロットはもち
ろんフラガだ。
「あんた、どうしてここに?」
「おいおい、オレは共に戦っている戦友を見捨てる冷たい男じゃないぜ」
「あんた……」
 ついこの間まで戦っていた相手を、戦友と呼ぶ。底抜けのお人よしなのか、それとも…?
「来るぞ、避けろ!」
「おう!」
 ストライクとバスターは同時に、カラミティのスキュラをかわした。
「上等だ! テメエら、まとめてさっきのカリを返してやんぜ!!」
 シュラークを連射するカラミティ。
「ち、あんまり時間をかける訳にはいかない! 行くぞ、坊主!」
「おう!」
 バスターとストライクは、カラミティと対峙した。



「このままじゃ……やられるわ」
 アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスはオーブ軍の敗色の濃さに唇を噛んだ。最初から分
かりきっていたことだが、現状に直面するとやはり想像していた以上に辛い。あの3機はキラた
ちが抑えていたとしても、ダガー部隊、連合戦艦部隊がオーブ軍を追い詰めていく。キラたちに
は、あの三機との戦いを早々に切り上げてほしいのだが、あの三機の戦闘力は、ザフトのエー
スパイロットをも超えている。いかなキラ、アスラン、フラガ、そしてディアッカでも、早々に決着を
つけることは難しいだろう。
「キラ君たちが来るまで、何とか、持ちこたえないと!」
 だが、ダガー部隊の一部が戦闘機部隊と連携を組んで、アークエンジェルを襲い始めた。追い
詰められるアークエンジェル。
「このままじゃあ!」
 サイの切羽詰った声が艦橋に響く。その時、ダガーの一機が突如、ビームに貫かれ爆散し
た。
「え!?」
 マリューは驚きの声を上げる。そして、モニターに彼らを救ったMSの姿が映し出された。彼ら
を救ったのは未知のMSではない。むしろ、非常によく知っているMSだ。だが、そのMSがアー
クエンジェルを助けるなど、「ありえない」事のはずなのだ。
「足つき、邪魔だ! さっさとどけえ!」
 キラ、アスラン、ディアッカと同世代ぐらいの少年の声が艦橋に響いた。通信はあのMSからだ
った。
「デュエル!?」
 そう。アークエンジェルの宿敵の一つ、デュエル。ザフト所属のMSがグゥルに乗って、ダガー
部隊と戦闘機部隊を排除しているのだ。そして、ものの数分でアークエンジェルを襲っていた連
合の部隊は全滅した。
「凄い……」
 ミリアリアが呟いたとおり、デュエルは見事な活躍を見せた。
「援護、感謝します。でもなぜ、私たちを助けたのかしら?」
 マリューがデュエルに通信を送った。デュエルのパイロット、イザーク・ジュールは少し黙った
後、口を開く。
「……俺の戦友がキサマらを助けた。それだけで十分だ。それに、ザフトの利益のためにもオー
ブに消えてもらっては困るのでな。独断出撃だ」
「あなたは……」
「まだ敵が残っているな? オレの独断で対処させてもらうぞ」
「え、ちょっと!?」
 一方的に通信が切られた。
「いいんですか? ザフトの加勢は、ウズミ様も望んでいないのでは?」
 操舵士のノイマンが訊くと、マリューは苦笑して、
「彼の独断なら、問題は無いと思うわ。私たちと似たようなものだし。頼もしい戦力が一時的に加
わった、と考えていいのかしらね?」
 と言った。ノイマンたちも、苦笑を浮かべる。



「もう、こいつら、何でこんなにいるのよ!」
 M1アストレイのテストパイロットであるアサギ、マユラ、ジュリの三人は、ダガー部隊に苦戦し
ていた。彼女らはいわば新兵だ。相手もMSパイロットとしては新米だろうが、それでも場数を多
く踏んでいるのだろう。徐々に追い詰められていく。
「……ロウ」
 アサギの脳裏に、懐かしい男の顔が浮かぶ。そうだ、こんなところで死んでたまるか!
「やってやるわよ、マユラ、ジュリ!」
「任せてェ!……ってアレは?」
 空の彼方からグゥルに乗ったデュエルが登場。上空からライフルとシヴァを連射し、あっという
間にダガー部隊を蹴散らした。
「オーブのパイロットか。キサマら。戦場でノロノロしてんじゃないぞ!」
イザークは捨て台詞を残して次なる戦場へと向かった。
「何? 誰?」
「知らない人…よね? デュエルだったけど」
 思いがけない援軍に戸惑うアサギとマユラ。そして、
「……かっこいい」
 ジュリはポツリと呟いた。



「そりゃあ、滅殺ッ!!」
 レイダーのミョルニルが、フリーダムに向けて放たれる。
「くそ!」
 何とかかわす。
 キラは苛立っていた。このままではオーブ軍が壊滅する。だが、目の前の敵は簡単に倒せる
相手ではない。強引に敵を突破し、オーブ本国へと機体を向かわせようとするが、
「ダメだよッ!」
 レイダーの右腕の2連砲が火を吹いた。
「ぐっ!」
 フリーダムの背部に当たり、そのまま落下。体勢を立て直そうとするキラの目に、ミョルニルを
放とうとしているレイダーが映った。かわせない、当たる?
 その時、
「ぐおお!?」
 レイダーが何者かに攻撃され、海中に落ちた。振り向くキラ。そこには、
「デュエル?」
 グゥルのミサイルで、レイダーを攻撃したデュエルがいた。とっさに身構えるフリーダム。
「久しぶりだな。フリーダム」
 イザークからの通信が、キラの耳に響く。
「オレはザフト軍のパイロット、イザーク・ジュールだ。お前にはアラスカでの借りがある。だから
……」
 デュエルは海中を見る。
「今は、こいつらが敵だ!」
 執念のレイダーが、海中から出てきた。
「このヤロー! せっかくのチャンスだったのに!!」
 レイダーはMA形態になって<デュエルに襲い掛かる。
「殺すッ! 必殺ッ!!」
 MA形態のレイダーのクロー部分の短射程プラズマ砲、アフラマズダがデュエルに放たれる。
「ちいっ!」
 とっさにデュエルはグゥルから跳躍する。レイダーのアフラマズダは虚しく、デュエルとグゥルの
間の空間を切り裂いただけだった。
「ちッ! こいつゥ!!」
「でやあ!!」
 ビームサーベルで切りかかるデュエル。レイダーは素早くMS形態となり、ニ連砲で受け止め
る。
「こいつーっ! 激殺ッ!!」
「おおおおおおおお!!」
 デュエルとレイダーは互角の戦いを繰り広げていた。打ち合い、交錯する蒼と黒の両者。
「イザークッ!」
 キラはイザークの援護に回ろうとするが、両者のスピードが速く、また、フリーダムの火力では
デュエルを巻き込みかねない。
「ここは俺に任せろ! お前はオーブの連中を助けてやれ!」
「……分かった! 頼む!」
 オーブ本島に向かうフリーダム。
「待て! 逃がすか!」
 後を追おうとするレイダーだが、デュエルが立ち塞がる。
「お前の相手は俺だ!」
「邪魔をするな、この、ゴテゴテMS!」



「うらあ〜!!」
 フォビドゥンのフレスベルグがジャスティスに向って放たれる。変幻自在のその射線を、ジャス
ティスはギリギリでかわす。
「そう簡単にはやられん!」
 ジャスティスの反撃。ビームライフルをフォビドゥンに向けて放つが、
「ムダムダ!」
 ビーム偏向装甲ゲシュマイディッヒ・パンツァーで曲げられてしまう。フォビドゥンの防御は完璧
だった。
「それなら、接近戦で!」
 遠距離戦は不利と見たアスランは、ジャスティスを突撃させる。
「はっ、甘いよ!」
 ニーズヘグを振るうフォビドゥン。ジャスティスはシールドでそれを防ぐが、衝撃で海に向かって
落下してしまう。
「うおっ!」
「バーカ、これで終わりだ!」
 フレスベルグを放とうとしたフォビドゥンの背後に、何かが激突した。
「ぬおっ!」
 揺れるシャニ。激突した物の正体は、ジャスティスのリフター、ファトゥムー・OOだ。海に落下す
る直前に放っていたのだ。ジャスティスは即座にリフターと合体し、体勢を崩したフォビドゥンにバ
ッセルを放つ。
「くう!?」
 シャニはフォビドゥンの盾で防ごうとするが、アスランは巧みにバッセルを操作し、右側の盾を
切り落とすことに成功した。
「そ、そんな、俺のフォビドゥンが……!」
「もらった!」
 ジャスティスからビームライフルとバッセルが、ファトゥムー・OOからは旋回砲とフォルティス・ビ
ーム砲が、フォビドゥンに放たれる。
「うあ!」
 被弾するフォビドゥン。右側の盾が無いため、ビームを完全に曲げる事が出来ないのだ。バッ
セルは何とかかわし、致命傷も避けているが、このままでは持たない。それに、もうすぐバッテリ
ー切れだ。
「くっ! 次は、殺すよ……!」
 シャニは唇を噛み締め、フォビドゥンのニーズヘグをジャスティスに向けて、投げつけた。
「何?」
 アスランは虚をつかれながらも、シールドでそれを弾いた。その隙にシャニは母艦パウエルへ
と撤退した。
「……ふう。手強い相手だったな」
 強敵を退けたアスランだが、戦士に休息の時は無い。直ちにダガー部隊の掃討に向った。



「このォ〜! 瞬殺ッ!!」
 レイダーはデュエルに向ってミョルニルを投げつける。
「フンッ!!」
 イザークはそれを見切り、デュエルのサーベルでミョルニルの鉄球を真っ二つにした。爆散す
るミョルニル。
「げげッ!? それなら、必殺ッ!!」
 ツォーンがデュエルに放たれるが、シールドで防がれる。
「何ィ!?」
「遅い! そこッ!!」
 デュエルのビームライフルが放たれた。右足を打ち抜かれるレイダー。
「ぐあ!? くそォ〜!」
 反撃を試みるクロトだが、コクピット内にアラーム音が響く。レイダーのバッテリーが限界に近
づきつつあるのだ。歯噛みしてクロトは、モニターのデュエルを憎悪の眼差しで睨んだ。
「くそっ、お前、次は必ず殺す! 殺してやるからな!」
 クロトの怨嗟の叫びが、イザークの耳に響いた。レイダーはMA形態となり、カ
ラミティの方へと飛び去っていく。
「まったく、煩いヤツだったな」
 そしてイザークも、ダガー部隊の掃討に向った。



「オラオラオラァ!!」
「ちィィ!!」
「こんのォ〜!!」
 バスター&ストライクVSカラミティの壮絶な撃ち合いは、まだ続いていた。バスターの超高イン
パルス砲とカラミティのシュラークが地を砕く。だが、お互いなかなか決定打を与えれないまま、
時間だけが経っていく。バスターとストライクが一
斉に攻撃を仕掛けようとした時、
「オルガァ! 撤退だァ!!」
「ん…? おぐおッ!?」
 急激なGに驚くオルガ。レイダーがカラミティを強引に捕んだのだ。
「ふざけんな、テメー! せっかくいいところだったのによ!!」
「ふざけてんのは、お前だろーが! あんな奴らに手こずってる上に、エネルギーだって、そろそ
ろ切れそうだろ。ちょっとは考えろ、バーカ!」
「ぐっ……」
 言い返せないオルガ。悔しいが、両方とも事実だからだ。
 カラミティを掴み、飛び去るレイダー。その後ろ姿を、バスターとストライクは黙って見送った。
残念だが、追撃している時間も余裕も無い。
 フラガの元にM1部隊からののエマージェンシーコールが入る。
「やれやれ、ようやく終わったのに、こき使ってくれるねえ」
「ボヤくな、少年。行くぞ!」
 ディアッカもまた、フラガと共にダガー部隊の掃討へと向った。



 キラたちの活躍によって、連合の部隊は多大な被害を受け、引き上げていった。だが、オーブ
の損傷も大きい。人もMSも、あちらこちらでその骸を横たえている。
 戦闘後、ディアッカたちはウズミに導かれ、オーブ最後の軍事拠点、カグヤ基地へと集結し
た。ディアッカは当初、ウズミがマスドライバーのあるこの施設に全軍を集めたのは、この重要
施設を背後にして、最後の交戦をするためだと考えていた。だが、
「オーブを離脱、だと?」
 ウズミの意志と言葉は、ディアッカだけでなく、キラやアスラン、マリューなどその場にいた全員
を驚かせた。
「君たちも分かっているだろう? オーブは崩壊する」
 ディアッカ、キラ、アスラン、そしてイザークも痛ましげな表情でウズミを見つめる。国が滅びる
のは指導者にとって最悪の事態だ。ウズミの心中を思うと、それを防げなかった自分たちに苛
立ちを感じる。
「お父様、何を……!」
 カガリもまた、涙ぐむ眼でウズミを見上げる。ヴズミは愛娘の頭に、優しく手を置く。
「カガリ、お前が残った者たちを導くのだ」
「え?」
「そして、彼らと共に見極めるがいい。己が望む未来を!」
 ウズミはマリューに視線を向ける。
「マリュー・ラミアス。またも辛い道だが、分かってもらえような?」
「ええ、強き火はどんなに小さくとも消えぬと、我々は信じております」
「うむ……」
 頷くウズミ。オーブの全軍撤退が決まった。



「君たちはどうするの?」
 最後の出撃を前に慌しいオーブ軍の仮設ドックで、キラはアスランとディアッカ、イザークに問
いかけた。これからの彼らの行く道について、だ。
「決まっているだろう? 俺はお前たちについていく」
 アスランは決意の篭った声で毅然と言った。
「ま〜、このままカーペンタリアに戻ってもいいんだろーけどさ。お前らに死なれちゃー、後味悪
いんでね。オレもついていくぜ」
 ディアッカも軽く、だが、硬い決意を示した。
「……俺はザフトだ」
 イザークが硬い表情で口を開く。
「俺は……プラントを守ることを優先したい。だから、貴様たちについていくことは
できん」
 悲痛な、されど毅然とした態度で答えるイザーク。そんな彼に、ディアッカが向き合う。その顔
はイザークとは対照的に明るく、だが、真剣な眼だった。
「そっか、それがお前の決めた道なら仕方ないな。ま、がんばれよ!」
 右手を差し出すディアッカ。イザークも右手を差し出し、固い握手をした。
「死ぬなよ」
「お前もな」
 そしてアスランも、二人に手を重ねる。
「アスラン、お前……」
「ディアッカの言うとおりだ。イザーク、死ぬなよ」
「……ああ」
 幾多の死線を潜り抜けてきた友たちの語らいを、キラは少し羨ましく見つめていた。



「さあ! 今度こそケリをつけましょう!」
 ムルタ・アズラエルは、旗艦パウエルから飛び立った三機を見送りながら、陽気に言った。
「僕もさっさと陸で食事がしたいんでねえ」
 連合産業理事にして、ブルーコスモス総帥でもあるこの男の口調は、どことなくこの戦争を楽し
んでいるかのようだった。戦争を一種のゲームのように考えているのかもしれない。
 そんな彼の態度に、連合軍指揮官のダーレスは不満だったが、上からの命令には逆らえな
い。
「ウズミ前代表の身柄、どうしますか?」
 ダーレスがアズラエルに問う。
「ああ、彼はねェ、見つけ次第、即刻、射殺してください。て言うか、オーブの人間は全員、殺して
ください」
「な!?」
 信じられない答えだ。一国の指導者を何の尋問もせず、裁判にかける事も無く 射殺? しか
も、国民全員を?
「だってそうでしょう? 彼は我々の誠意を込めた要求にも、こうした戦闘行為で 答えたんです
よ。重罪モノですよ。ナチュラルのくせに、コーディネイターに手を貸すような裏切り者には死ある
のみ、ですよねえ?」
 とてつもなく残酷な事を陽気に話すアズラエル。ダーレスは、そんな彼に悪魔の姿を見た気が
した。



 基地内にエマージェンシーがかかる。敵の襲来だ。
「出撃、だな!」
 ディアッカはバスターを起動させ、オーブの大型宇宙船クサナギの方へと進ませた。キラとアス
ラン、イザークは敵の迎撃の為、出撃する。アークエンジェルはクサナギの予備ブースターとロ
ーエングリンを利用して、大気圏を離脱する準備を始めた。
「さて、と。ん?」
 誰かから通信が入った。ディアッカがモニターを見ると、
「ヘマして置いてかれないでよ!」
 ミリアリア・ハウの顔が映し出された。思わずドキッとするディアッカ。
「な、おいおい、バカにするなよ。これでもザフトのエースだぜ。そんなヘマをする 訳ないだろ」
「ふ〜ん……そう」
「そう、って、そんだけかよ?」
「別にィ? …………気をつけてね。それじゃあ」
 一方的に通信は切られた。
「お、おいおい! ったく、何なんだよ、あいつは?」
 まあ、らしくない緊張をほぐしてくれる結果となった。少しだけ感謝する。
 そうこうしている内に、既に戦闘は始まっていた。
 クサナギの上から前方を見ると、フリーダムとグゥルに乗ったデュエルが、MA形態のレイダー
と、その背に乗っているカラミティを、ジャスティスがフォビドゥンを相手にしている。互角の死闘
を演じる六機。
 戦闘の最中、アークエンジェルが宇宙に飛び立つ。続いてクサナギも・・・のはずなのだが、
「……遅いな。何やってんだ、オーブの連中は!」
 そろそろ発進時刻のハズなのだが、おかしい。クサナギはなかなか発進する気配がない。アー
クエンジェルは既に大気圏を離脱している。しびれをきらしたディアッカは、クサナギに通信し
た。
「おい、何をチンタラやってんだよ? 時間がねェぞ!!」
「そ、それが、カガリ様が来ないんだ!」
「な? あの、お嬢ちゃんがかよ!?」
 ディアッカの脳裏に、気の強そうな金髪の少女の顔が思い浮かぶ。その時、
「すまん、今来た!!」
 キサカ一佐と、なぜか後ろで泣いているカガリがモニターに映る。何かあったようだ。キサカが
艦長席に座る。
「待たせてすまん。クサナギ、発進するッ!!」
 クサナギが猛スピードでマスドライバー上を駆ける。それに気づいたフォビドゥンが近づいてく
る。
「させるかよ!」
 ディアッカはバスターの対装甲散弾砲で<フォビドゥンを弾き飛ばす。
 一方、デュエルはレイダーをカラミティごと蹴り飛ばして、
「ここらが潮時か。……死ぬなよ、ディアッカ、アスラン。そして……キラ」
 と、その場から離脱した。
 フリーダムとジャスティスはクサナギに高速で追いすがった。その背後を、体勢を立て直した三
機が迫る。ディアッカはフリーダムたちの援護をするために、超高インパルス砲を撃ちまくる。
「こんのォ! 落ちろォ!」
 クロトが狂気の声を上げ、迫る。
「こいつ、邪魔すんなァ!」
 オルガはクサナギ上のバスター目掛けて、トーデス・ブロックを連射する。ディアッカも援護を兼
ねて、それを打ち落とす。
「お前ェら〜! 待てよ〜!!」
 シャニはひたすらジャスティスを狙っている。アスランもフォビドゥンに、ビームライフルで威嚇
する。
 何とかフリーダム、ジャスティス共にクサナギに着艦した。それでもなお追いすがる三機に、フ
リーダムとジャスティス、そしてバスターは全砲門を発射。三機は直撃、中破し海中に落下し
た。
「おわァ〜!!」
「げえッ!!」
「くわあッ!!」
 オルガたちの驚愕の声が響く中、クサナギも大気圏離脱コースへと入った。直後、マスドライ
バーとモルゲンレーテが同時に爆発した。
「なっ!?」
 連合の攻撃か、とディアッカは眼を向いたが、
「お父様ァ〜!!!」
 カガリの叫び声を聞いて、全てを理解した。ウズミはオーブの命。そのオーブが消える時は、
彼の命が尽きる時だ。
 ディアッカは無意識に、炎上しているオーブに、ウズミに敬礼した。自分たちに未来を託してく
れた偉大なる男に。そして彼の、いや、自分たちの望みを果たすために、戦う事を決意するので
あった。


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