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PHASE−02
「その名はガンダム」
間一髪、ジェークとリックはMSで地上へ脱出した。二人の目の前には、ミゲルが乗るジンと戦
う白い機体、ストライクと、ジンの横で膝をついた赤い機体、イージスの三機が見えた。
「! そんな…あれはX−104ゲイルに、X−209ストーム!? よりによってあの2機までザフ
トに奪われたというの!?」
ストライクのコクピット内で、驚愕の表情を浮かべるラミアス。それもそうだろう。自分達ナチュ
ラルのベテランパイロットが誰一人として、まともに起動させる事も出来なかった2機が、地下の 封印ブロックから現れたのだから。
目の前のジンとイージス、そして更に2機の敵。事態は最悪だった。
「君、ごめんなさいね。こんな事に巻き込んでしまって……」
ラミアスはストライクを操縦しているキラに言う。
しかし、運命は彼らを見捨てなかった。
「おい、そこの白いの!」
ラミアスがゲイルと呼んだ機体から、通信が送られてきた。
「ジンと戦っているという事は、あんた、俺と同じ連合兵だろ? 俺は地球連合軍所属のリック=
エンバースだ。紫のはザフトに奪われちまったけど、こっちは俺のだ。一応、あんたの味方だぜ」
瞬時に状況を把握したリックは、ストライクを味方だと認識し、通信を送ったのだ。それを聞い
たラミアスは安堵して、
「私は連合軍大尉、マリュー=ラミアスです。しかし何故、貴方がその機体に乗って動かしている
の? 今まで誰も起動させる事さえ出来なかったのに……」
「あー! そんな事はあとあと!! 目の前にいる奴らを何とかしないとやられちまうぞ、って
前!」
ストライクの眼前に、剣を持ったジンが突っ込んでくる。だが、
「くっ!」
キラが既にOSを書き換えていたため、ストライクは恐ろしい反応速度で剣をかわし、カウンタ
ーパンチを叩き込んだ。
「何? さっきまでと動きが全然違う!? 生意気なんだよ!ナチュラルがぁ!」
ジンのパイロット、ミゲルはジンを起き上がらせ、今まで一番速く、鋭く剣を突き出す。
「くっ! 後には皆がいる……。負けられないんだ!」
キラはストライクをしゃがませ、ぎりぎりでかわすと、両腰に装備されたアーマーシュナイダーを
ジンの右肩と首元に突き刺した。
「何だと? ええぃ!」
コクピットにいるミゲルの周囲では、バチバチと配線がショートしている。あと一撃でも食らえば
爆発するだろう。
「ミゲル、ここは俺たちに任せて撤退しろ。今死んでも無駄死にだぞ!」
ジェークは、ストームをジンのところまで走らせる。
「すまない。撤退する」
ミゲルは悔しげに答えると、上空へと飛んでいく。
「隊長、今、ジェーク、アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコルが地球軍の新型2機と戦っていま
す。ラスティは失敗しました。」
ミゲルは大破したジンで宇宙まで脱出。ヴェサリウスに待機しているクルーゼに通信を送っ
た。その通信を受けたクルーゼの表情が変わる。
「地球軍のモビルスーツが、更に2機あるだと? 情報では、5機だったはずだが……。分かっ
た、ミゲル、君はこのまま帰艦しろ。彼らの援護には私が向かう。シグーを出せ!」
クルーゼはそう言うと、格納庫へ向かおうとする。
「ちょっと待って下さい、隊長」
副隊長ランドがクルーゼを呼び止めた。
「どうした、ランド?」
クルーゼは抑揚の無い声でランドに向き直る。
「ラスティを始め、多くの部下が死にました。貴方は部下が死んでも、弔いの言葉もかけないの
ですか?」
ランドは普段の温厚な表情ではなく、やや怒りの表情をクルーゼに向けた。
「そう怖い顔をするな。私とて悲しんでいないわけではない。だが、今は任務中だ。万が一、ヘリ
オポリスに残っている彼らに何かあったらどうする? だから私が援護に向かうのだよ。ヴェサリ ウスを暫く頼んだぞ、ランド」
クルーゼはフッ、と笑ってブリッジから出て行った。その後ろ姿を見るランドの心には、何とも晴
れない気分が広がる。
『確かにそうだ。だが、隊長は俺達を駒としか見ていない様な気がする……。いかんな、自分の
上官に疑念を持っては。みんな、無事でいてくれ』
ランドは険しい眼をして、暗黒の宇宙を見ていた。
フラガのメビウス・ゼロと戦艦マルセイユ3世は宇宙空間に出て、ザフト軍と戦っていた。しか
し、輸送艦であるマルセイユは、戦闘能力が低く、あえなく轟沈。
「くそっ!」
フラガはヘリオポリス内に入ろうとする。だが、マルセイユの爆光から、白いMSが出現する。
クルーゼの乗るシグーだ。
「この感じ、ラウ=ル=クルーゼか!」
「私がお前の存在を感じるように、お前も私の存在を感じることができるようだな。不幸な宿縁だ
な、ムウ=ラ=フラガ!」
冷静に接近するクルーゼ。2機はヘリオポリス内に消えていった。
「これで数の上では互角だな。大丈夫か?」
リックのゲイルはストライクに近づく。
一方、ジェークのストームも、イージスに近づき、
「アスラン、その機体は動けるのか?」
と、通信を送る。
「今、OSの書き換えが済んだ所だ。エネルギーが心もとないが、格闘戦ならやれる」
「なら、行くぞ。あの2機は今の内に叩いておかないと、いずれザフトの脅威になる」
「……分かった」
そう答えて、アスランは通信を切った。その口調が妙に思いつめていて、アスランらしくないな、
と感じたジェークだが、今は目の前の敵に集中する事にした。
「この機体、近接戦闘を主眼に置いているらしいな。いいだろう、乗りこなしてみせる!」
ジェークはそう叫ぶと左腕に装備された攻盾システム「スティンガー」を構え、四本のランサー
ダートを撃ち出した。
「はっ! そんなものがフェイズシフトに通用す…!」
リックは強烈に嫌な予感がした。ゲイルのビームライフルを構え、ダートを撃つ。さらにすぐさま
シールドを展開、これを防ぐ。
四本のダートの内、二本を打ち落とす事に成功。残り二本はシールドに突き刺さった。もう少し
反応が遅れていたら、死んでいただろう。
一方、イージスとストライクは対峙したまま動けずにいた。
「キラなのか? いや、だがアイツがここにいるはずが……」
そう考えるアスラン。だが、もし、本当にキラだとしたら……。そう考えられずにはに入られなか
った。そしてそれはキラの方も同じだった。
PS装甲を展開させているイージスに対して、ストライクはイーゲルシュテルンとアーマーシュナ
イダーしか攻撃手段が無い。明らかにストライクが不利だ。見かねたリックは、ストライクの援護 に回る。
「させるかよ!!」
ゲイルのビームライフルが火を吹く。
「何? うわっ!」
イージスは盾で防いだが、その動きを止められてしまう。
「ザフトめ、お前ら、何でこんなことをするんだ! ただ軍事施設を狙っているだけのつもりかも
知れねーが、ストライクの後ろを見ろ! 民間人にも被害が及んでいるんだ! お前らの正義 は、民間人を殺さないと証明できないのかよ!」
動きを止めたイージスに、ビームサーベルを抜き飛び掛るゲイル。だが、アスランとて並みの
パイロットではない。シールドでビームサーベルを防ぎ、
「俺だって戦いたくは無い! だけど仕方ないだろう! 地球軍が起こしたあの悲劇で、母は!」
カウンターで蹴りを入れる。
「ぐあっ!」
ゲイルは後に吹き飛ばされた。
「くそっ、やってくれる! だが!」
体勢を整えようとした矢先、目の前にはストームの右腕に装備された専用のピアサーロック「フ
ェンリル」が迫る。
「げっ!」
「かわせはしないだろう。終わりだ!」
フェンリルは更にその凶爪を展開し、内部からビームサーベルを出現させた。
「少しぐらい手加減しろよ!」
リックは再びライフルを構え、フェンリルに照準を合わせ撃つ。
「甘い!」
ジェークが呟いたと同時に、直線的に進むだけだったフェンリルが、曲線的に動き出す。ライフ
ルの光条はフェンリル自身にかわされ、寸分の違いも無くゲイルのコクピットを狙う。
しかし、直撃寸前で、フェンリルは爆発した。一瞬の出来事だったが、リックは見た。フェンリル
に横から飛んできたナイフが突き刺さるのを。
「大丈夫ですか? リックさん!」
ストライクから通信が送られる。
「ああ…って、君は誰だ? ラミアス大尉が操縦してるんじゃないのか?」
「僕はキラ=ヤマト。ラミアスって人は怪我をしているんです」
「そうか。とにかく助かった、サンキュー。次はこっちから行くぜ! あまり気は進まないけど
よ!」
リックはゲイルのぺダルを思いっきり踏み込んだ。強烈なGが、リックの体を襲う。
「ぐっ……、おい、少しは言うこと聞きやがれゲイル!!」
あまりの出力故に、中々自分の思うとおりに動いてくれない乗機に文句をぶちつつも、ストーム
に向かって突っ込んで行く。
「な、迅い!」
ジェークは回避しようとするが、間に合わない。ゲイルがビームサーベルを抜き、切りかかる。
「くそっ、だがこの程度では!」
ビームサーベルをスティンガーで防ぐ。
「もうやめろ、ザフト! ここには俺達軍人だけでなく、一般市民もいるんだ。さっきの赤い奴にも
言ったが、罪も無い市民を巻き込むのがお前達の正義なのかよ!」
リックは接触回線で、ジェークに訴える。
「くっ……貴様らナチュラルが起こした血のバレンタインの所為で、俺は両親を、たった一人の
妹を失ったんだ! それだけじゃない、死んでいった何十万の人の中に、平和な家庭が、愛し合 う恋人が、未来ある子供がいたんだ! 貴様らが、貴様らナチュラルさえ存在しなければ!」
普段は冷静なジェークが、感情をむき出しにしていた。それは目の前に立ち塞がる連合軍へ
の、ナチュラルへの呪詛の言葉だ。
「俺はナチュラルじゃない! 何で住む場所が違うだけで、こうも憎みあわなきゃならない? 俺
達は手を取り合って共存できるはずだ!」
「そんなのは理想論だ! 出来る訳が無い!」
「そうやって最初から諦めて決めてんじゃねーよ! 俺はその理想を実現する為に、こうして戦っ
ているんだ!」
一度距離を取った二人は再びぶつかりあう。
「大丈夫ですか、リックさん!」
ストライクがアーマーシュナイダーを構えて走って来る。
「バカ、余計なときに来るんじゃねぇ! 丸腰同然の機体で何が出来…」
止めようとするリック。だが、ジェークの攻撃の方が早かった。スティンガーの銃口をストライク
に向ける。
「そんなに死にたいか? なら、貴様から落としてやるよ!」
強烈なビームがストライクを襲う。だが、ストライクはギリギリでかわした。
「何で、貴方はそこまでナチュラルを憎むんですか? ナチュラルだから、コーディネイターだか
らって、憎み合っていては、永遠に悲劇が繰り返すだけだ!」
キラはジェークに訴える。
「知ったような事を! アスラン、何をやっている!」
キラの言うことを無視したジェークは、先程から動かないイージスに通信を送る。
「……すまない、機体に問題が起きた。今、調べている」
アスランはそう言って通信を切った。しかし、機体に問題があると言うのは嘘である。アスラン
は考えていた。ナチュラルとコーディネイターの関係を、そして自分が戦う理由を。
「ちっ、ならアスラン、お前はヴェサリウスに戻れ。その機体は無傷で隊長にお渡ししなければな
らないのだからな」
「…………」
沈黙するアスラン。そこへ、
「アスラン、ジェーク、無事か!」
と、ザフトコードの通信。
「その声は、イザークか!?」
「他にもいるぜ」
「大丈夫ですか、アスラン! ジェーク!」
「ディアッカ、ニコルも!」
新たに現れた3機のモビルスーツ。そのいずれも、ラミアスには見覚えのある機体だった。
「デュエル、バスター、ブリッツ……なんて事!」
「一気に戦力差が開いちまったな。2対5、か」
「くっ……。切り抜けられるのか? いや、切り抜けないと!」
ラミアスは驚愕のあまり、言葉が出ない。リックは苦笑し、キラは冷や汗をかいている。何処か
らどう見ても、絶望的な状況。勝てそうにも無い現実。
「イージスの調子が悪い。俺は撤退する。後は頼むぞ」
アスランはすぐにこの場から離脱した。ストライクに友かもしれない人物が乗っている可能性が
ある以上、戦えないと思ったからである。
「イージスが……」
長年、世話をしてきた機体が奪われ、唇を噛み締めるラミアス。だが、現状では指をくわえて
見ているしかない。
「これでも2対4か。けど、こんな所で死ねるか! 俺は…負けられねぇ!」
リックは出現した3機に突撃して行く。
「貴様、まだ!」
ジェークが迎え撃つ。ストームは主武装を撃ち尽くしていたが、彼はまだ戦うつもりだった。
「おいジェーク! ラスティはどうしたんだ?」
ディアッカがガンランチャー、収束火線ライフルでゲイルとストライクを牽制しながら、ジェークに
通信を入れる。
「見て分かるだろう」
ジェークはあっさり言い放った。
「そんな、ラスティが……」
「おのれ、ナチュラルの分際で! よくも!」
イザークはそう言って、ゲイルに向かってサーベルを構えて突っ込む。
「落ち着いて下さいイザーク! 一人で前に出ては危険です!」
「黙れ軟弱者! 来い、ディアッカ!」
イザークはニコルに吐き捨てると、ゲイルとの距離を詰めていく。
「くそっ! いい加減にしやがれ!」
リックはデュエルに向かって、ライフルの下部に装填されているグレネード・ランチャーを放ち、
バスターに向かっては、脚部のミサイルランチャーを撃ち出した。
「なめるなぁ!」
イザークはシールドで防御し、ディアッカは、
「こんなんでやられるかよ!」
と、ミサイルをライフルで撃ち落す。
「お見事。でもよ、隙だらけだぜ!」
リックは不適に笑うと、バスターのガンランチャーを切り払い、デュエルの肩装甲版を切り裂い
た。
「貴方に恨みはありませんが、ここで落ちて貰います!」
ブリッツがストライクに、攻盾システム「トリケロス」から三連ランサーダートを発射。ストームも
ビームライフルをストライクに向けて連射した。
「僕も、やられる訳にはいかない!」
キラはランサーダートの一本をアーマーシュナイダーで切り払い、残りは前に進むことで紙一
重でかわした。しかし、ストームのビームライフルを受けて、動きを止められてしまう。また、優勢 だったリックも、二対一の不利を巻き返せず、徐々に押される。
「はぁ、はぁ、……畜生! ここで終わりかよ」
「くっ……」
「いつまでも逃げ切れると思うな! これで最後だ!」
ゲイルとストライクに銃口が向けられる。絶体絶命だ。
「そんなMA如きで私に付いて来れるのか? ムウ!」
軍事基地上空で忌々しげに呟くクルーゼ。彼はシグーを急停止させて、フラガのメビウスの後
ろに付く。
「何?」
驚くフラガにガトリングガンを撃ち出していく。それは次々にメビウスに吸い込まれた。被弾し、
武器を破壊されたメビウスに、戦闘能力は無かった。眼下には4機のモビルスーツに囲まれて いるゲイルとストライクが見える。明らかに不利な状況だった。
しかし、その時!
「バリアント、撃てぇぇぇぇ!」
地下からの高エネルギー反応。その一撃はシグーの片腕を吹き飛ばした。やがて崩れ行く瓦
礫の中から、1隻の戦艦「アークエンジェル」が出現した。
「くっ、全員、撤退だ!」
クルーゼはそう指示すると、空に消えていった。
「仕方ないな。これ以上やったらヴェサリウスまで帰れないしな。イザーク!」
ディアッカもすぐにクルーゼに続く。
「後一歩でこいつらを倒せるというのに!」
イザークは納得が行かないようだったが、
「僕達の機体も限界です。戦艦相手に戦うのは無理ですよ。引き上げましょう」
とニコルに窘められて、
「……ちいっ!」
渋々空に昇る。
「青い機体のパイロット、お前の名は? 俺はジェーク=ノーマン」
ジェークはリックに向かって通信を送った。
「俺の事か? 俺はリック=エンバースだ」
リックは答えた。
「リックか。いい名だ。覚えておこう。だが、次に会った時は、こううまくいくと思うなよ」
ジェークはそう言い捨てて、ストームを発進させた。飛び去っていく4機の後ろ姿を見て、リック
は一息ついた。
「ふぅ、何とか生き残ったみたいだな。ところで大尉さんよ、あの戦艦は一体なんだ?」
「あれはアークエンジェル。連合軍の希望となる艦よ」
白く輝く船体は、非常に美しい。『希望』と呼ぶのに相応しい外見の艦だ。
「キラ!無事か」
ストライクの下の方では、キラの学友であるサイやトール達が彼の名を呼んでいた。
リックはゲイルから降りる。キラもラミアスと共にストライクから降りた。ラミアスの負傷を手当て
していると、彼らの側にアークエンジェルが降りてきた。
「大丈夫ですか? ラミアス大尉」
アークエンジェルから降りたショートカットの女性、ナタル=バジルール少尉が駆け寄ってくる。
「僕達は、これからどうなるんだろう?」
キラは地面を見て呟く。その言葉を聞きつけたナタルが、
「勿論、こちらで身柄を拘束する」
あっさりと、冷静に言った。
「ま、仕方ないかもな」
ナタルの後から男性の声。クルーゼ操るシグーと死闘を繰り広げていたフラガだった。
「地球軍第七艦隊所属のムウ=ラ=フラガ大尉だ。宜しく」
「私は地球軍第二宙域第五特務師団所属、マリュー=ラミアス大尉です」
「同じくナタル=バジルール少尉で……」
ナタルが所属を言おうとしたところで、フラガは真剣な顔をしてキラに歩み寄った。そして一
言、
「君……コーディネイターだろ?」
「……はい」
少し間を置いてねキラが俯いて答えた。その場にいた地球軍の全員が驚く。
「そんな目でキラを見るな! 例えコーディネイターでも、こいつは敵じゃない! 俺達の友達
だ!」
トールは叫ぶが、下士官達が一斉にキラへ銃口を向ける。その銃口の前に、キラの友人たち
が立ちはだかる。
「止めてよ! キラはザフトのMSから私達を守るために戦ってくれたのよ?」
ミリアリアが叫び、
「下がってろ、キラ。ここは俺達に任せろ」
サイが頼もしく言い、
「さっきの借りもあるし……。仲間は助け合うもんだろ?」
普段は臆病なカズイも、そう言ってくれた。
『みんな・・・』
キラは心の中で、彼らに感謝した。
「銃を下げなさい。彼は敵ではないわ」
「しかし、ラミアス大尉!」
「そんなに驚くことではないわ。戦いが嫌でここに移り住んだコーディネイターが居たって不思議
ではないもの。そうでしょキラ君?」
ラミアスはキラに話しかけた。
「ええ……。それに僕は一世代目のコーディネイターですから」
キラは若干鋭い目をして答えた。
「両親はナチュラルという事か。しかし…」
ナタルはまだ納得がいかない様だ。
「もういいでしょ! 俺達を解放してくださいよ?」
トールが再び叫ぶ。それも、そうだろう。ほんの数時間前まで唯の学生だった彼らには受け入
れがたい状況なのだから。しかし返って来た答えは、
「それは出来ません。軍の最高機密を知ったあなた方は、然るべき所と連絡が
取れ処置が決まるまでは、私達と行動を共にして貰います」
という残酷なものだった。
「くっ…汚い! それが貴方達、軍のする事なんですか?」
キラが堪りかねて激昂する。
「そうだぜ。確かに軍の最高機密を見ちまったことは問題あっけどよ、状況が状況だし、こいつら
は民間人だろ。それにこいつのお陰で1機は奪われないで済んだんじゃねーのか? せめて礼 ぐれーは言ってやれよ」
リックも、ナタルとラミアスに噛み付く。 そんなリックをフラガが宥める。
「坊主、仕方が無いんだよ。こいつらは連合の最高機密に接してしまったんだからな。民間人と
はいえ『はい、そうですか』といって簡単に返すわけには行かないんだよ」
「俺は坊主じゃねぇ! リック=エンバースだ! 覚えとけよ、おっさん!」
「お、おっさん……」
その言葉にフラガの受けた衝撃は、宿敵クルーゼの攻撃以上のものだった。
この後、先程のザフト軍侵攻で、主だった艦長、士官が戦死した事が分かり、生き残った兵士
たちの中で一番階級の高いラミアスが、アークエンジェルの艦長に就任した。ストライクとゲイル は工場に残っていたパーツで修復が完了。次なる戦いに備えている。
彼らは知らず知らずの内に、運命の鎖に捕らえられていた。
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