
|
Story.9
散り行く命(前)
ジェネシスの第二波が放たれた。
ヴェルド達は止める事が出来なかった。
破滅の光の向かう先は月。そこには連合軍の軍事拠点、プトレマイオス基地
がある。
月の前に展開している連合艦隊が成す術も無く撃沈されていく。
「高エネルギー反応接近中!!」
「何だとっ!!」
逃げる事も適わぬまま、訪れた破滅の光によって連合兵の体は膨れ上がり、
破裂していく。
基地内に悲痛な叫び声が響く。全ての者の命を燃やし尽くした光は、数秒の
後には基地を崩壊させていた。
その一報を耳にしたアズラエルは信じられないといった表情で立っていた。今
や連合の戦力は半数以下。まともに戦っても勝ち目は無いだろう。
「くっ・・・。ドミニオンを発進させろ!」
アズラエルはナタルに詰め寄った。
「しかし、このまま戦っても我々に勝ち目は・・・」
「いいから発進させろよっ! この戦争は、勝たなきゃ意味が無いんだっ!」
「・・・了解した。ドミニオン、発進する。対船、対MS戦闘用意!」
ドミニオンがゆっくりと動き始めた。
これで本当によかったのだろうか? 時々ナタルはそう思う。
確かに自分達はコーディネイターと戦争をしている。だが、いつから「勝つため
の戦争」をしているのだろうか。
少しナタルは後悔した。
あのまま「アークエンジェル」に残った方が良かったのかもしれない。そう・・・
残った方が・・・。
ヤキン・ドゥーエ宙域では依然、戦闘が行われていた。
ヴェルド達「カラーズ」のメンバーも少しずつ危うくなってきた。
やはり物量による差は縮めにくい。
「くっ・・・もうエネルギーが・・・」
アイリーンがエネルギーゲージに目をやる。「ブルーセイヴァー」のエネルギー
が底を着きそうだった。
「戻れ、アイリ」
「ヴェルド?」
「ここは俺に任せろ。他の奴もエネルギーが危なかったら補給しに行け!」
ヴェルドからの指示に、アイリーンは大人しく従う。いつもは喧嘩ばかりしてい
るが、いざと言うときにものすごく頼りになる。
「ミストラル」に着艦すると、整備士達がすぐに駆けつけ、「ブルーセイヴァー」
を
修理していく。
「アイリ」
と、誰かに呼び止められた。アルフだ。どうやらアイリーンと同じように補給をし
に来たらしい。
「補給か?」
「そうよ。アルフは?」
「補給だ」
「そう・・・」
それっきり会話が途絶えてしまった。
修理の音が耳に響く。
「「あ・・・あのさっ!」」
同時に声を出す。
「な・・・なんだよ・・」
「アルフこそ・・」
アルフは一息つくと話を始めた。
「なぁ、アイリ。お前、ヴェルドの事、好きなのか?」
「なっ・・・・」
アイリーンの顔が一気に赤くなる。
「違うっ! あたしは・・・・その・・・・」
後になるほど声が小さくなり、聞き取りづらくなる。
「その・・・なんだよ」
「あたしが・・好きなのは・・・あ・・・アルフ・・あんたよ」
突然の告白。
アルフも突然のことに対応し切れなかった。自分からふったとは言え、何がな
んだかでアルフの頭はショート寸前だった。
「いつまでもボーっとしてないでよ! 言ったでしょ! あんたが好きなのよ!」
「・・・・そうか。実はな・・・俺もどうやらお前に気があるらしい・・」
「えっ・・・」
「なぁ、もし戦争が終わったら・・・俺と、結婚してくれないか?」
一瞬の間。
答えを言うにはこれだけで十分だったが、思わぬ邪魔が入る。
「アイリさん、アルフさぁん」
走ってきたのはエイス。二人と一緒、補給に来たらしい。
「どうしたんですかぁ?」
「あっ・・・いや・・・その・・・な、アイリ?」
「へっ!? あ・・・ああそうなのよ、うん」
「ふぇ? さっぱりわかんないですぅ」
エイスが聞こえないくらい小さい声でアイリは呟いた。
「OK」
と。
やっと修理の終わったデュエルに、イザークは乗り込んだ。
「イザーク・ジュール、デュエル、出るぞっ!」
「エターナル」から勢い良く出撃した。
「ジュール隊長!」
デュエルの姿を見つけ、交信してきたのはゲイツのパイロット。
「今までどこに行っていたんですか?」
「・・・よく聞いてくれ。俺ははこれよりプラントから離反し、ラクス・クライン率いる
部隊と行動を共にする! 意義のある者はここを去れ! 次に会う時は、敵同
士だ!」
イザークの声は震えていた。その宣言はジュール隊はおろか、ヤキンドゥーエ
内部にまで放送されていた。
「ジュール隊長・・・」
「・・・あなたを敵にまわす訳には行きません」
「今、司令部からあなたを殺せと命令が下りました。しかし、私たちの上司は司
令部でのん気に見物している上の者ではありません。ジュール隊長、あなたで
す。我々は、あなたについて行きます」
ジュール隊全員が賛同してくれた。これはイザークにとっても予想外の、とても
嬉しい事だった。
「お前ら・・・・。ふんっ、バカが。勝手にしろっ!」
「イザーク!」
割り込んできたのはアスランの声だった。
「なんだ、アスラン」
「今の放送は、本当なのか?」
「そうだ。悪いか?」
「い・・・いや・・・。よし、行くぞ、イザーク。この戦争を終わらせるために!」
「そうだな。その後、お前とも決着をつける!」
「・・・ああ」
「ミストラル」で補給を済ませたエイス、アイリーン、アルフの三人は、ヴェルド
の
元へ急いだ。
「いましたっ!」
エイスが叫ぶ。
度重なる戦闘でフレアヴァームの体はボロボロだった。だが、皆が戻ってくるま
で必死に戦っていた。
「大丈夫か、ヴェルド!」
「遅ぇよ・・・。こっちはボロボロだってのに・・・」
「あんたは早く戻りなさい。あたしたちが何とかするから」
「悪りぃな・・」
フレアヴァームが離脱し、敵の次なる目標はエイス達三人に絞られた。
「行くぞ!」
アルフの声で、一斉に散る。
ホワイトイェーガーのマシンガンが、ブルーセイヴァーの対艦刀が、ミッドナイト
ノワールのビームライフルが敵を蹴散らす。
「エイス、右から来るぞ! アイリ、深追いはするな!」
さすが元「カラーズ」副隊長。見事な指揮で次々と敵を撃破していく。
更に「ミストラル」からの援護射撃も加わった。多目的ミサイル「イフリート」が
炎
の壁を作り、三機を守る。敵はビームライフルを撃ってくるが、熱のせいでビーム
が曲がる。
その時、ミッドナイトノワールのコクピットにアラートが鳴り響く
「アラート!? どこから・・・?」
一瞬の、だが、致命的な隙だった。ゲイツのビームライフルがミッドナイトノワー
ルを狙っていた。
今からでは避けきれない。
アルフは死を覚悟した。
「アルフっ!!!」
アイリーンがミッドナイトノワールに体当たりをする。
直後、ゲイツからのビームがブルーセイヴァーに直撃。ブルーセイヴァーは、そ
の操縦者と共に宇宙に散った。
「・・・・あ・・・アイリーーーーーーンっ!!!」
叫んでも返ってこない返事をアルフは待っていた。当然、返事は無い。
「そんな、そんな・・・・・」
「アルフさん、しっかりしてください! アルフさんっ!!」
「お・・・・」
搾り出したように小さな声。
それは衝撃に変わった。
「お前ぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
怒りが込み上げてきたとき、アルフの何かが弾けて、ゲイツを一蹴する。
「アルフさん、落ち着いてくださいぃ!」
「お前らが・・・お前らが、アイリを殺したぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
エイスの静止も聞こえていないようだ。完全に我を忘れてしまっている。その暴
走にエイスは身の毛がよだつのを覚えた。
ぞっとする。そんな感じが、エイスの中に生まれた。
「アルフさんっ!!」
ホワイトイェーガーがミッドナイトノワールの前に立ちはだかる。
「エイス、どけっ!!」
「嫌です! こんなアルフさんは見たくないです!」
「な・・・何を・・」
「アイリさんが好きなのは今のアルフさんじゃなかったです! 前の、静かなア
ル
フさんが好きだったんです。今のアルフさんをもしアイリさんが見たら・・・悲しみ
ますよ・・」
「・・・・・・・・」
ミッドナイトノワールの動きが止まった。
「・・すまない、エイス。取り乱してしまって・・・。行こう、生きるために・・」
「はいっ!」
二人は新たな気持ちを胸にしまい、戦場を駆け抜けた。
ムウはストライクを駆り、ディアッカと共にヤキン防衛軍を蹴散らしていた。
数こそ多いが、一体の性能はそんなでも無い。特に苦戦するものでもなかっ
た。が、
「・・・っ! 来たか、クルーゼ!」
突然湧き上がる不快感。
「おっさん、どこ行くんだよ!」
「近くにクルーゼがいる! お前はここを頼む!」
「はぁっ!? ちょっと待てよっ!」
ディアッカの声も虚しく、ストライクは遠ざかっていく。
ストライクの向かった先に見慣れぬMSがいた。そこからだ。妙な感じがする
のは。
「クルーゼェェェェェっ!!!」
ストライクのビームライフルから閃光が走り、未知のMSを掠める。クルーゼが
操るザフトの最新鋭機、プロヴィデンスだ。
「はっ! やっと来たか、ムウ・ラ・フラガよ!」
プロヴィデンスの巨大なバックパックから、何かが離脱した。
分離式統合制御高速機動兵装群ネットワークシステム「ドラグーン」。ムウの
以前の愛機「メビウス・ゼロ」のガンバレルに酷似した、強力な遠隔操作兵器だ
った。
「くっ!」
フラガは持ち前の反応力で、多数の「ドラグーン」からのビーム攻撃を避けてい
くが、それでも執拗な攻撃に追い詰められる。
「くそ! やられてばっかでたまるかよ!」
ビームサーベルを抜き、喰らい付く。ラウもプロヴィデンスのビームサーベルで
斬撃を防いだ。
「そんな旧式で、このプロヴィデンスに勝てると思っているのかね?」
あくまで余裕を振りまいているラウに、ムウは叫ぶ。
「ふざけるなっ! 貴様のしようとしている事は危ないんだよ! 俺は、不可能を
可能にする!」
「では、やってみたまえ。貴様の全ての力を持って私を止めて見せろ!」
再び四方から攻撃が降り注ぐ。ストライクを囲むように展開した「ドラグーン」は
確実にダメージを与えている。ムウも避ける事が出来ない。
「ぐあっ!」
ストライクの右腕が飛び、ムウも衝撃により体にダメージを受けた。左の脇腹
から血が滲み出る。
「はははははっ! どうしたのかね、ムウよ! 不可能を可能にするのではなか
ったのか?」
「くそっ・・・。これじゃぁ・・・」
ムウは意を決し、『アークエンジェル』に引き返した。このまま戦っても勝てる見
込みは無いからだ。
その『アークエンジェル』は再び現れた『ドミニオン』と交戦中だった。
「ヘルダート、てぇーーーーーっ!!」
『ドミニオン』が「ヘルダート」が放たれるが、簡単にかわされてしまう。ブリッジ
でナタルが叫ぶ。
「敵艦の動きをよく見ろ!」
「どうしたんですかァ? 全然当たらないじゃないですか」
「黙っていてください、アズラエル理事」
アズラエルは肩をすくめ、にやりと笑っていた。
「ゴットフリート照準!」
主砲である「ゴットフリート」が競り上がる。『アークエンジェル』の「ゴットフリー
ト」も競り上がる。
『てぇーーーーーっ!!』
ほぼ同時に放たれる緑色の砲火。
『アークエンジェル』上手くかわしたが、『ドミニオン』は「ゴットフリート」の二番を
沈黙させられた。ブリッジが激しく揺れる。
ナタルの額に汗が滲む。その時、重い空気を切り裂くように高い声が響いた。
「アークエンジェル、逃げて! もう・・・やめて!!」
フレイが叫んでいる。それを見たアズラエルは一気に不機嫌になった。
「お前・・・何をやっているっ!!!」
フレイを殴り飛ばす。フレイの華奢な体が宙を舞う。
「アズラエル! 何をしている!」
ナタルが艦長席を離れ、アズラエルを止めようとする。
「君こそ何をしている! とっととあの艦を沈めろ!」
アズラエルは懐から一丁の銃を取り出した。
「そんな物を出してどうする? この艦をのっとるつもりか!!」
「のっとるも何も、この艦の建造費用を出したのは僕だ! だから僕の艦でもあ
る!」
無茶苦茶な理屈を振りまくアズラエルにナタルが出した決断。ナタルはアズラ
エルに組み付き、
「総員、直ちに退艦せよ!」
「なっ・・・何を言っているんだお前! 敵が目の前にいるんだぞっ!」
「黙れっ! この艦の艦長は私だ! 艦のクルーを守るのも私の役目だ!」
クルーが退艦してゆく。その中でフレイは戸惑っていた。果たしてナタルを置い
て行ってしまってもよいのだろうか。
「バジルール艦長!」
フレイがナタルの元に寄る。
「君も早く退艦しろ!」
「でも、それでは・・・」
「心配するな・・・。私も後から行くさ・・」
それでも、フレイはその場に立ち止まっていた。
それを見かねたナタルが、
「誰か、その子を連れて行けっ!!」
と言った。フレイの手を別のクルーの手が掴んだ。
「いやっ! ちょっ・・・離してぇぇぇぇっ!!」
フレイも連れて行かれ、場にはナタルとアズラエルだけが残った。
「くっそぉぉぉ!!」
アズラエルがナタルを離し、クルーを追う。だが、エレベーターの入り口はナタ
ルの下ろしたシャッターによって塞がれた。
「あなたはここで死すべき人だ・・・私と共に!」
「・・・ふ・・・ふざけるんじゃないよっ!!」
アズラエルの銃が火を噴いた。ナタルの右足から、大量の血が吹き出る。
「あああああっ! ぐ・・・・あああ・・・」
「どうして君はこうも無能なんだ? 敵が目の前にいるなら、撃てばいいのだ!」
「かつての・・・仲間だから・・・躊躇うのさ・・」
頭の中にアラスカで別れたマリューの顔が浮かぶ。
本当に戦場ではない平和な地で再会したかったものだ。
その願いも、どうやら叶いそうに無い。
「ためらう? なら、君は軍人として失格だな!」
ニ発目が放たれる。
今度は左肩を貫いた。鮮血が溢れ、無重力空間に漂う。
傷だらけの体になりながらも、ナタルは話し続けた。
「・・・この戦争は・・どうあがいても・・あなたの負け・・・・。そして・・ザフトの負け
だ!」
「負けだとっ!? 馬鹿な事を言うなっ!!」
三発目。今度は右のわき腹。
もう既にナタルは瀕死の重症を負っている。
「僕は・・・勝つんだ!絶対に!!」
コントロールパネルを操作し、「ローエングリン」発射に移る。
その『ドミニオン』の様子をマリューは『アークエンジェル』から見ていた。
その時、サイが叫んだ。
「ドミニオンより脱出艇! 艦を放棄する模様!!」
「ナタル・・・何を・・?」
更にミリアリアが叫ぶ。
「ストライクより交信! あっ・・・・」
ミリアリアが息を飲むのを不信に思い、
「どうしたの?」
とマリューが尋ねる。
「ひ・・・・被弾ありです!」
「直ちに通信回線を開いて!」
モニターに写るムウの顔。そこにはいつもの飄々とした雰囲気は無かった。
「く・・・しくじっちまった・・・。クルーゼの・・・新型・・プロヴィデンス・・危険すぎ
る! もう一度・・・」
「もう喋らないで! 整備班、緊急着艦用ネットを用意して!!」
『アークエンジェル』の右舷カタパルトハッチが開き、ストライクを収容しようとす
る。
その隙をアズラエルは待っていた。キーボードを叩き、相手の座標角を入力
し、発射を進めた。
ナタルはそのアズラエルを薄れ行く意識の中、見ている事しか出来なかった。
「く・・・くくくくく・・・・はぁーーーーーーーっはっはっはっはっはっ!!!!!」
ブリッジにアズラエルの声が高々と響く。そして、カタパルトハッチ下部より「ロ
ーエングリン」が放たれた。
脱出艇の真横を掠め、『アークエンジェル』に向かって伸びてゆく。
「ローエングリン!? 回避ーーーーーっ!!」
「駄目ですっ! 間に合いません!!」
ノイマンが絶望的な顔で前方を見る。
ノイマンだけではない。サイも、ミリアリアも、マリューも、全員、己の死の光を
心に灯した。
が、その光は掻き消された。
凄まじい衝撃がブリッジを襲うが、被害は受けていない。
その代わりに目の前の光景に息を飲んだ。
ストライク―――。
ストライクがシールドでブリッジを守っている。
「む・・・ムウ!!?何をしているのっ!?」
「・・・お前達全員の命とこの俺の命・・・どっちが安いと思う?」
ムウの口調は完全にいつもの物だった。
何処か飄々としていて、頼りなさそうに思えて、でもいつもキラと共に自分達を
守ってくれた。
その命が今、燃え尽きようとしている。
「そうだろ・・・マリュ―?」
「・・・人の命に安い高いなど、ありませんっ!!」
マリュ―らしい優しい言葉。
最後に話せてよかった―――――。
「へへっ・・・・やっぱ俺って、不可能を可能に・・・・・」
それ以降、ムウの声は響かなかった。響いたのはストライクの爆音のみ。
「あ・・・む・・・ムウぅぅぅぅぅっ!!!」
絶叫するマリュー。
一方、『ドミニオン』ブリッジではアズラエルが自分の犯した事に放心状態だっ
た。
今まで自分の手で人を殺した事は無い。手が震えている。
「・・・・・っ、あなたの完全な負けだな・・・アズラエル・・」
ナタルを睨みつける。
「く、くそがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
怒りに任せて四発目の銃弾を放つ。
「ドミニオン接近中! 艦長、指示をっ!!」
サイが報告する。
マリュ―はショックから立ち直りきれていない。
「艦長っ!!」
ノイマンがつい声を荒げてしまう。
「・・・・・・ローエングリン・・・・照準!」
「ローエングリン」砲塔がせり出す。
アズラエルは狂ったように全武装に目を通す。
「ローエングリン」以外使えそうな武装は無い。頼みの「ローエングリン」もチャ
ージが追いついていない。
うろたえるアズラエルの足元で、瀕死のナタルが呟く。
「ラミアス艦長・・・これで終わりにしましょう・・・。あなたが撃てば・・・全てが終わ
る・・・!」
その呟きがマリュ―の耳に届くはずが無い。しかし、自然と口から出てくる。
さあ、終わりにしよう。
ナタルは叫んだ。
「撃て、マリュ―・ラミアスーーーーっ!!!」
『アークエンジェル』から「ローエングリン」が放たれた。
目標に向かって真っ直ぐ伸びる光をナタルは霞むほど細い目で、アズラエルは
自分の死に恐れた恐怖の眼差しで見た。
「う・・・・うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『ドミニオン』ブリッジに着弾した「ローエングリン」は二人の体を燃やし尽くし、
『ドミニオン』の船体を崩壊させた。
また一つ、尊い命の灯火が失われた―――――。
(Story.9 Fin)
|