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第一章・堕天使降臨
爆炎の中に消えるヘリオポリス。
モニターに映るソレを消すと、銀髪の少年は溜め息を吐いてコックピットのシー
トに背を預けた。
「ザフトの勝利・・・か」
『四機渡ったみたいだね〜』
銀髪の少年が呟くと同時に、茶髪の少年が回線を繋いできた。
「一機逃がしたのか?」
『GAT−X105―――通称ストライク。やれやれ、コーディネイターが、あんな機
体に乗ったら、戦況は一気に変わるね』
肩を竦め、茶髪の少年は苦笑いを浮かべた。
銀髪の少年は顎に指を添えて考えた後、
「リーダーの判断は?」
『【勝手に適当にやって頑張ってくれ。面倒ごとは嫌いなので、決してこっちに火
の粉が降りかからないように!】だってさ』
「あの男は・・・」
銀髪の少年は、また小さく溜め息を吐く。
『けど、そろそろ決めないと〜。母艦に戻るか、連合に付くか、ザフトに付くか。さ
っきの映像から、結構、日にちが経ってるよ?』
急かすように言う茶髪の少年。銀髪の少年はどうすべきか迷っていた。
その時、レーダーに何かが反応した。
「何だ? ・・・・・これは・・・」
『連合の最新強襲機動特装艦【アークエンジェル】だね。どうやらザフトに襲われ
てるみたい。うわ、ストライク一機で、奪われた四機と戦ってるよ』
「・・・・・カイン」
銀髪の少年は意を決したように茶髪の少年――カイン・クレスト――の名を呼
んだ。
『何?』
「私達も戦場に行くぞ」
『どっちの味方? それとも両方とも殲滅する?』
カインが尋ねると、銀髪の少年はコインを取り出し、放り投げると手の甲で受け
止めて隠した。
『表、ザフト』
「裏、アークエンジェル」
少年の手がどかれる。コインは裏を向いていた。
「俺の勝ちだ」
『了解。アークエンジェルに加勢するんだね』
カインは『やれやれ』と首を振って頭を押さえるが、何処か楽しそうだった。
『全く・・・。君は分が悪い賭けに負けた事が無いんだから・・・』
「そういう事だ。どうせやるなら分が悪い方が良い。それに・・・」
銀髪の青年は裏の絵柄を見せたコインをしまうと、目を鋭くした。
「自分達を進化種だと思ってるザフトは気に喰わん」
『はいはい。了解しました。けどさ、僕らの機体、【天使】の舟に乗るには、ちょっ
と物騒じゃない?』
「冗談を言う暇があるなら行くぞ」
言って銀髪の少年は通信を切り、キーを叩いて、機体を起動させる。
「アザゼル・・・・出る!」
やがて、暗黒の宇宙に黒い翼を持った堕天使が飛び立った。
「くそぉっ!!」
ストライクに乗る少年――キラ・ヤマト――は四機を相手にして唇を噛み締め
た。
物資補給の為、アルテミスに立ち寄る予定だったアークエンジェルだったが、
その行動を読まれ、ザフト軍に待ち伏せされていた。
更に後方も取られ、正に前門の虎後門の狼である。
戦えるのはキラの乗るストライクと、ムウ・ラ・フラガ大尉の乗るMA(モビルア
ーマー)、メビウス・ゼロだけであった。
「ま、まずい!!」
そして長い戦闘でストライクのエネルギー残量が切れてしまい、青い機体は灰
色になってしまう。
好機とばかりに四機の中の一機、デュエルが襲い掛かって来た。
「しま・・・っ!!」
一瞬、やられたと思ったキラだったが、MA形態のイージスがストライクを掴ん
で来た。
「アスラン!!」
キラは、その機体に乗る親友――アスラン・ザラ――の名前を叫ぶ。
『このままお前を連行する!』
通信からアスランの声が響く。
デュエルのパイロット――イザーク・ジュール――が何か文句を言ってるが、ア
スランが一喝する。
何とか抜け出そうとしたが、フェイズシフト装甲が解除されたストライクに振り
切
る力は無かった。
『ソイツを連れて帰られたら困るな』
その時、ストライクとイージスに、キラでもアスランでもない別の人物の声が入
って来た。
二人が驚愕していると同時に、イージスがストライクを掴んでいた爪が切断さ
れた。
『何!?』
アスランは驚愕し、キラも呆然とする。
ストライクとイージスの間に、黒く、鳥の翼のようなモノを持った自分達のものと
同系統の機体があった。
その黒い機体は緑色の目を光らせ、腕を組んで相手を睨んでいた。
「な、何だ!?」
『折角、助けてやったのに何だとは失礼だな』
驚愕するキラに、その黒い機体のパイロットと思われる人物が言って来た。
「き、君は!?」
『話は後だ・・・来るぞ!』
黒い機体はビームサーベルを抜き、真っ先に襲い掛かって来たデュエルの両
腕を切断する。
『何ぃ!?』
イザークは驚愕し、黒い機体を睨む。
だが、既に戦闘不能と見たのか、黒い機体はデュエルから離れ、その後方で
狙っていたバスターに向かって飛んだ。
『な!? は、速い!!』
そのスピードにバスターのパイロット――ディアッカ・エルスマン――は目を見
開くが、次の瞬間には武器を全て破壊され、デュエル同様、両腕を切断する。
『貰ったぁ!!』
しかし、その背後を最後の機体、ブリッツが取った。
「あ! 危ない!!」
左腕のトリプルクローで破壊しようとするのを見てキラが叫んだ。
がぎぃっ!!
だが、突如、上から白銀の狼の頭のようなモノがブリッツの頭に噛み付いてき
た。
『な、何だ!?』
突然の事に対処できず、ブリッツのパイロット――ニコル・アマルフィー――は
動きを止める。
ブリッツの上では、白銀の同系統の機体が腕を伸ばし、ブリッツを見ていた。
『あ〜、パイロット君、聞こえるかい? そのまま退くのなら良し。もし、抵抗する
なら容赦なくビームを撃つ。仲間と共に退きたまえ』
突然、通信をして来る謎の声に、ニコルは驚くが、狼の口からレーザーの光が
収縮されるのを確認し、唇を噛み締めると静かに頷いた。
そして、戦闘不能となった四機は、自分達の艦に帰って行った。
「す、凄い・・・」
あっという間に苦戦した四機の内、三機を撃墜した黒い天使の機体に、見事
なタイミングで黒い機体を助けた銀色に左腕に狼の頭部を装着した機体。
キラは呆然とするしかなかった。
『聞こえるか、アークエンジェル。それと、ストライクのパイロット』
キラは、ハッと通信の声に我に返る。
「は、はい。あの・・・助けてくれて、ありがとうございました」
『それで、あなた方は? 何故、我々を助けてくれたのですか? 何で連合の機
密と同じ機体を持っているのですか?』
謝罪するキラに対し、アークエンジェルの艦長、マリュー・ラミアスが冷静に質
問してきた。
『教えてやるから、そっちに収容してくれないか? 此処まで全速で飛んで来て
アザゼルもフェンリルもエネルギーが無いんだ』
『・・・・・判りました。助けて頂いた恩を返す意味で、お二人を迎え入れます』
『感謝する』
そして、黒い機体はストライクの肩を持ち、アークエンジェルに、白銀の機体
共々、収容された。
黒い機体の胸が開き、黒い戦闘スーツを着た少年が降りてくる。
格納庫にはアークエンジェルの主要メンバーが集まっており、銃を構えてい
る。
パイロットの少年はメットを、取って、その顔を見せる。
皆は、彼の容姿に一瞬、目を奪われた。
透き通るような首の後ろで結わえてある長い銀髪に、地球のように青い瞳。
まるで女性のようで、とてもザフトのMSを撃退したように思えなかった。
やがて、銀髪の少年の後ろに白い戦闘スーツを着た茶髪に緑の目の少年も
降りて来た。
そして、マリューは一歩前に出て、
「私はアークエンジェルの艦長、マリュー・ラミアス大尉です。先の戦闘で助けて
頂いた事には感謝しています。まず、そちらの名前と所属をお教え願います
か?」
その質問に、茶髪の少年――カインは困ったように頬を掻き、
「所属って言われましてもね〜・・・。僕はカイン・クレスト。このMS、フェンリルの
パイロットだよ」
「アベル・ハートレット。アザゼルの専属パイロットだ」
二人は、それぞれお互いの機体を指差し、自己紹介する。
「それで、この機体は?」
「言っときますけど連合とは一切、関係ありませんよ」
その言葉に、マリューの隣で控えていた女性仕官――ナタル・バジルール少
尉――が反論してきた。
「バカを言うな。この機体は連合が機密で造りあげた最新兵器だ。言え、何処か
ら情報を・・・」
「あのね〜、僕らはディザーターなの。だから、情報なんか無くても造れるし、む
しろあなた達のより強力なんですよ?」
カインの言葉に、そこにいた誰もが驚愕した。
「ねぇ、ディザーターって?」
唯一知らない、キラの友人――ミリアリア(ミリィ)・ハウ――は、恋人のトール・
ケーニヒに訊いた。しかし、答えたのは別の友人、サイ・アーガイルだった。
「ディザーター・・・・。ザフトにも地球連合にも属さない組織だよ。俺達をはるか
に凌ぐ科学力の持ち主らしいけど、詳細は不明。生きていてディザーターに出逢
える確率は、無いに等しいと言われている」
「んな大袈裟な。僕らは暇さえあれば適当なコロニーで買い物したり、娯楽施設
で遊んだりしてるよ」
聞こえてたのか、カインはサイの言葉に苦笑して言った。
「君らがディザーターだという証拠は?」
誰もが緊張してる中、唯一、砕けた感じの男性が二人に近寄って来た。しか
し、その動きには無駄がなく、隙を感じさせない。【エンディミオンの鷹】と呼ばれ
る連合のエースパイロット、ムウ・ラ・フラガだ。
カインは僅かに感心しつつ、後ろの二機を指差し、
「このアザゼルとフェンリルが証拠にはならない? データ集めるとか言っていじ
くりたいみたいだけど、無駄だと思うよ? あなた達からすれば、ブラックボック
スの塊だろうからね」
そう言われてフラガは、
「なるほど。確かに立派な証拠だ」
と言って苦笑する。その後にマリューが、
「それで、あなた方の目的は?」
と、質問する。するとアベルが、
「『このまま、この子達を連合政府に連れて行き、ディザーターの技術を得れば
戦況は大きく地球連合の優位になる。ならば、彼らの条件を飲んで、艦に留まら
せておくのが正解』・・・・と思ってるようだな」
「え?」
急に変な事を言われて、マリューは首を傾げる。
「あんたの事じゃない。そう考えているのだろう? そちらの女性は」
そう言ってアベルはナタルを見る。
考えを読まれたナタルは気まずそうに視線を逸らす。
「まぁまぁ、アベルもそんなに苛めないで。すいませんね。どうも修羅場を潜り抜
けて来たせいか、軍人の考えが手に取るように判っちゃって・・・」
微笑を崩さぬまま、カインはアベルの肩に手を置くと、彼に代わって謝った。
「修羅場、とは?」
「そうですね〜・・・・」
カインは微笑から一転し、まるで獣のような目をすると、マリューに向かって拳
銃を突き付けた。
皆は驚愕し、二人に一斉に銃を向けた。
だが、二人とも表情一つ変えず、堂々としている。
「貴女の銃ですよ。ラミアス大尉」
「え? ・・・・え!?」
カインに言われ、マリューは懐を探る。すると、確かに持っていた銃が無かっ
た。
「い、いつの間に・・・」
「さっき、アベルの肩に手を置いた時ですよ。はい、返します」
再びニッコリと微笑むと、カインは銃をマリューに返す。
「お判り頂けましたか? ディザーター(逃亡者)と言われてますけど、僕らは、
あなた達より格段に強いんです。僕ら二人なら二十秒もあれば、此処にいる人
達を皆殺しにして、艦を奪う事も可能なんです。手荒な真似は好きじゃありませ
ん。どうか銃を引いてくれませんか?」
カインの要求にマリューは全員に銃を引くよう指示した。
「さて、じゃあ僕らの目的をお話します。実は、僕ら母艦と離れ離れになっちゃっ
たんです」
「はぁ?」
「いやね、少し前に事件のあったヘリオポリスの跡を調べてたらザフトが襲って
来てね〜。一応、撃退したんだけど、母艦と離れ過ぎて宇宙を彷徨ってたら、あ
なた達が戦闘してるのを見つけて加勢したんですよ」
そう言うが、カインの言ってる事は全くの嘘である。
いや、戦闘してるのを見つけて加勢したというのは事実だが、別にヘリオポリ
スの調査も、ザフトの襲撃も何も無い。
ただ、アークエンジェルとの接触の為の口実である。
良くもまぁ、嘘がベラベラと出るカインに感心するアベルだったが、感情が乏し
い為に面には出さない。
「と、いう訳で取り引きといきませんか?」
「取り引き?」
「ええ。あなた達の目的地は?」
「とりあえず、目の前のアルテミスで補給して、その後は地球のアラスカ本部に
降りようと思ってるわ」
「ふむ。だったら地球に降りるまでの間、僕らは護衛するという事にしましょう。
途中で僕らの艦が見つかったら降ろしてください。それまでの間、ザフトが襲っ
て来たら僕とアベルも応戦しましょう。それで、どうです?」
「・・・・断れば?」
「そうですね〜。さっき言った事を実行しましょうか?」
「まるで脅迫ね・・・」
「失敬な。これ以上ない戦力を提供しようというのに」
あくまでも笑みを崩さず、殺気を感じさせないカインと、無言で静かに氷の圧力
をかけるアベルを交互に見てマリューは小さく溜め息を吐いた。
「判りました。その条件を飲みましょう」
「そうですか♪ じゃ、握手」
極上の微笑みでカインはマリューと手を握り合った。
「しかし、驚いたな〜。まさかディザーターを見る事になるなんて・・・」
アークエンジェルの廊下を、いつもの五人で歩きながら、トールは呟いた。
「ああ。格納庫じゃ緊張したけど、俺達と歳変わらないんだな」
「けど・・・強いんだよね」
サイの言葉に、カズイ・バスカークが顔を俯かせながら呟く。
その言葉に皆は言葉を失った。
「あ・・・」
その時、前方から歩いてくる人物を見て五人は立ち止まる。
着替えたのだろう。アベルは、戦闘スーツから白のカッターの上に黒のロング
コート、黒い革ズボン、腰にはチェーンが下げられている。
「えっと・・・アベルだっけ?」
「ああ」
「その・・・艦長と何か話してたんじゃないのか?」
「私がいても余り意味が無いのでな。カインに任せてきた」
サイの質問に答えると、アベルはキラに視線を移した。
「ストライクのパイロット、コーディネイターか」
『!!?』
一瞬でキラをコーディネイターと見破ったアベルに皆は驚愕した。
以前、ヘリオポリスでフラガが、キラをコーディネイターと見破った事もあった
が、自分達と同い年ぐらいの少年が見破った事は、その時以上のものだった。
「悪いな」
ひゅっ! ごっ!!
『!!?』
突然、アベルは蹴りを繰り出し、キラは腕で受け止めた。
「・・・・反応は良いようだな」
「な、何するんだよっ!?」
「呆けてる暇は無いぞ」
アベルが言うと、彼は体を回転させて裏拳を放ってきた。
キラは上半身を屈めてソレを避けて脇下を狙ってアッパーを繰り出した。
だが、アベルは肘を落とし、キラの拳に叩き付ける。
「くっ!」
「む・・・」
二人は体に走った苦痛に表情を歪める。
だが、肘鉄と拳なら、拳だけがやられるのだが、コーディネイターの身体能力
の高さで、アベルの肘もやられた。
「なるほど・・・。これがコーディネイターか」
肘を押さえてアベルはキラを見詰める。
キラも拳を押さえてアベルを見る。
「悪かった。お前の力が知りたくて、試す真似をしてしまった」
そう言うと、アベルは歩き出した。
キラは拳を押さえつつ、去って行くアベルの背中を見詰めていた。
話が終わり、カインは着替えて、とある人物の部屋に来ていた。
ちなみにカインは、赤いシャツの上に白い長袖のシャツ。黒いジーンズを穿い
ている。
「おぉ! これは、二年前廃刊になった幻の○○本じゃないですか!!」
「ふっふっふ。どうだ? 偶然、路地裏で見つけたんだ。見たいか?」
「・・・フラガ大尉。女性とは男にとって謎で魅力的な存在なんです。と、いう訳
で、これは崇高なる性と肉体構造についての研究であり、決して、やましい行為
ではありません」
「君は中々、話が判るな〜。よし! アルテミスに到着するまで女体の構造につ
いて研究しようじゃないか!」
「お供します!!」
フラガの部屋で怪しい行為をしているカインとフラガであった。
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